人間社会でもそうだと思うのですが、『知らない人』『未知な人』と接点をもった場合の対応は色々だったりします。
温かく迎える方もいれば、馴染むまで時間のかかる方もいらっしゃいます。もちろん、とにかく変化に対応することが嫌いなタイプの方もいらっしゃるかと思います。
猫たちのケースはどうでしょうか?
我が家の現状
ご存じの方もいらっしゃると思うのですが、我が家には現在飼い猫が2匹おります。簡単に申し上げると、このような2匹です。
アメショー:とにかく動じないタイプ。ペットショップの売れ残り。
黒猫:臆病と慎重さで出来ているタイプ。野良出身。
更にですね、彼ら2匹に追加して、現在妻が保護している猫が1匹おります。
保護猫:巨大猫。白と黒のぶち模様。人懐こいとのことですが僕のことは警戒。
つまりこの屋根の下に合計3匹の猫がいる状況です。
ただ彼らが顔を合わせる機会があるかというと、保護猫のほうは我が家唯一の隔離部屋であります『保護猫ルーム(通称)』におりまして、飼い猫の2匹とは完全に別生活を送っています。
妻は定期的に保護猫部屋でお世話をしている状況ですが、飼い猫の2匹はそんなことを知らず、いつも通りののんびり生活をつづけております。
保護猫の健康状態確認
野良だった猫を保護するプロセスについては、あんまりよく知らないのが正直なところです。忙しそうな妻になんとなく訊いてみると、『ノミの駆除』『伝染病の検査』『健康診断』など、その辺りをを実施して、やっと他の猫たちと対面出来るようですね。なんでそんな事今更聞くんだ? といった様子で渋々教えてくれました。
この保護猫、気になって僕も足を運んでみた事があるのですが、ドアを開けて僕と目があった途端、妻自作の『発泡スチロールルーム(毛布完備)』に閉じこもって、出て来なくなりました。やはり妻でないとダメなようです。
「あの子すっごい賢いのよ、エサが入っている引き出し勝手に開けて、袋噛み千切って食べてたりするし」
とのことでしたので、賢さ故に人を見ているのかも知れませんね。残念。
この巨大保護猫の検査は無事に終えることが出来たようでした。つまり、いつでも他の猫たちと対面出来る状況です。さて、そうなると、飼い猫の2匹との接触を見るのも実は楽しみだったりします。
ある出来上がったコミュニティがあって、そこに異物が放り込まれたとき猫社会ではどんなことが起こるのでしょうか。まあ、コミュニティとは言っても2匹だけの世界ですが、ちょっと楽しみだったりします。
リビングへのドアオープン
というわけで、実験開始です。のんびりだらりと生活しているアメショーと黒猫だけの世界となっているリビングへの動線を開けてみました。巨大保護猫はどんな行動をとるのでしょうか。
この実験、実は今までも何度か行ってはいるのですが毎回結果はほぼ決まっています。今回も同じなのか? それとも違った結果となるのか、僕はドキドキしながらその時を待ちます。飼い猫2匹と一緒に、リビングでその時を待っていました。
遠くから巨大保護猫の鳴き声が聞こえてきます。リビングのドアを開けているとよく聞こえますね。年季が入ったドスのきいた鳴き声です。段々と近づいてきています。丁度アメショーと黒猫は眠りこけているところです。
二匹ともなんですが、耳が立ちました。聞きなれない鳴き声に反応してピクリとします。
黒猫のほうは目を開けて声のしたほうをじっと見ています。「同類の生き物が来たぞ」と敏感に感じているのかも知れません。
アメショーは耳が立ったものの「ああ、めんどくせえ」とでも思っているのかそのまま眠り続けます。うん、こういう性格は素晴らしい。先日の震度3でも目を覚まさなかっただけのことはあります。
握りこぶしくらいの幅で開いたドアの後ろに、影が見えます。そうです。巨大保護猫がとうとうリビングのドア傍までやって来たのです。
猫たちの反応
機敏に立ちあがった黒猫はドアの隙間へ向かいます。眠りこけていたアメショーも立ちあがりました。これも通常の反応です。好奇心が眠さに勝ったんでしょう。つまり二匹の飼い猫たちは、細く開いたリビングのドアを挟んで、巨大保護猫と対面している状況です。
「ファアアアアア!」(よく表現される声だと『シャアアア!』ですね)
ああ、やっぱり。
黒猫は思いっきり『威嚇』しています。これはいつものパターンです。つまり黒猫は『新しいものを異常に警戒する』タイプなのです。
いつもであれば、新しく来た猫のほう(今回は巨大保護猫)が、びっくりして逃げだすパターンがほとんどでした。しかし、巨大さ=余裕なのでしょうか。巨大保護猫はポカンとした顔で、断続的に「ファアアアア!」と精いっぱい威嚇している黒猫を眺めているだけです。
そこにアメショーがやって来ました。事態は混乱するのか、そう思っていたところアメショーは巨大保護猫の鼻に自分の鼻を近づけています。
そして…、そのまま鼻チューです。
どこかのサイトを拝見して知ったのですが、これは『信頼の証』のようですね。アメショーはもちろん「アメリカン・ショートヘア」です。フランクなアメリカ人のように、いきなり「よう、兄弟!」とでも言いあう関係になったのでしょうか。そのままクンクンと続けます。
そのすぐ横で、一生懸命『ファアアアア!』と威嚇を続ける黒猫。なかなかカオスな光景です。おもしろくなって写真を撮ろうと僕が近づくと、保護猫は踵を返して保護猫ルームに駆け込んでしまいました。
黒猫の威嚇よりも僕の存在の方が、巨大保護猫にとっては脅威だったようです。
ああ、残念。
結果として
巨大な保護猫と初対面した、飼い猫2匹の反応はこんな感じでした。
アメショー:愛と信頼の証、鼻チューで出迎える。
黒猫:威嚇&威嚇&威嚇
巨大保護猫:アメショーと打ち解ける。黒猫の威嚇は無視。僕を見て逃げた。
若干例外的な部分はありますが、この反応は今までのケースとほぼ同様です。
ただ、「黒猫はこのまま新しい仲間を拒否しつづけるのか?」というと、案外そうではなかったりします。
以前、『高性能エンジンを積んだとしか思えないくらい落ち着きのない子猫』と対面させたことがあるのですが、最初の20分くらいは「ファアアアア!」と威嚇しつづけていたのに、しばらくすると寄り添って眠っていたり、子猫の額あたりをくんくんと嗅いでいる状況を見てびっくりした記憶があります。
つまり彼(黒猫)は「新しい友人を作るのに時間がかかるタイプ」なだけだと思われます。臆病で時間がかかるタイプでしょうか。
出会いは大切、多様性も大切
この猫たちの対面を記事にしようと思ったのには理由があります。緊急事態宣言が5月末まで、との報を受けて我が家でもその話題になったときのことです。
「●●ちゃん、コロナだから里帰りしてるんだよなあ、帰ってくるかなあ」と小2の息子が言いました。
その『●●ちゃん』が、少しかわった名前だったので「どこに里帰りしてるの?」と訊くと妻が教えてくれました。サウジアラビアの方みたいです。
最近の小学校は、僕が幼少期の頃と比べて断然国際色が豊ですね。情報としては『クラスに3人くらいは外国籍の方がいる』というのは知っていたのですが、肌の色や習慣も異なるそのお子さんのことを、息子がすんなり当然のものとしている様子に少し嬉しくなったりしました。
「●●ちゃんさ、変わった洋服着てるんだよ。でも可愛いんだよなあ」
と●●ちゃんについて、色々教えてくれる息子の話を聞きながら、閉鎖的な時代に育った自分の記憶と比較したりしました。今だから言えるのかも知れませんが、未知な人や物との遭遇は大切な財産です。
すぐに打ち解けられればそれが最善でしょう。ただ、時間をかけて理解するケースだって当然あります。大切なのは、どこかで遮断したり、諦めたりすることなく「理解」しあうことじゃないかと思っていましたが、今や『多様性』そのものが、当然のものだったりするんだなあと、十数年ぶりくらいにマジメに考えさせられました。
猫社会においても、なんだかんだと相手のことを理解しあいながら生活しているのかも知れません。相変わらず黒猫とアメショーは夜になると、取っ組み合いのケンカ(に見える)をしていますが、それも理解しあった上でのコミュニケーションなのでしょうか…
そんな記事です。
ランキングってのに参加してみました!